血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
「へえ、鴇津も来んのか」
鴇津の前に仁王立ちする松根が、不敵な笑みを浮かべている。
「お前のドラテクを拝める日が来るとはな。
これで俺がお前より上手いってことを証明できるぜ」
「言ってろハゲ」
「てめぇはッ、何遍言ったらわかんだ!
これはツーブロックだツーブロック! 今の流行りなんだよ」
「流行りだろうが、ハゲはハゲだろ」
「違ぇよ! そもそも髪生えてっし」
鴇津の隣で大笑いしているリツに、「笑ってんじゃねぇ!」と松根は怒鳴り声を上げる。
最近鴇津に、人がよく絡んでくるようになった。
元々松根とは、憎まれ口を叩き合うぐらいは仲がよかったようだが、最近は松根だけではなくまるで釣られるように他の人たちも、鴇津に近寄ってくるようになった。
今も、鴇津がゲーセンに行くと言えば、何のゲームが好きかとか、何がどれぐらいのタイムだとか、みんなが声をかけてくる。
とはいえ、当の本人は鬱陶しそうにシカトしている。
しかし、それでも会ったばかりの頃よりは険がなくなったというか、表情に緩みができたように思う。
隙ができたからこそ、みんながこうやって話しかけてくるのだろう。
それが、本人は面倒に思っているようだが、リツとしては、そんな状況がうれしかった。
「トキツ先輩」
しかし、そんな状況をもっとうれしいと思っているであろう男がいる。
「俺、なんか飲みモン買い行きますけど、なんか飲みたいモンありますか」
最近のユウゴは、鴇津にぺったりだ。
ユウゴの鴇津に対する崇拝度は前から神掛かっていたが、最近のそれにはまた一段と磨きがかかっていた。
今までは鴇津さんの領域を邪魔しない、とか言ってほとんど近寄りもしなかったのに、今は隙があればこんな風にパシりを買って出る。