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血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 それもこれもたぶん、


「じゃあ、コーヒー頼むわ。ブラックな」

「うッス! わかりました」


 こうやって、鴇津がちゃんとユウゴを遣うからだろう。

 今までならきっと鬱陶しそうな顔で、「うるせえ」とか「いらねえ」とかで一蹴するか、最悪シカトしていただろう。

 たぶんユウゴは、そうやって蔑ろにされたり、嫌われたりするのが怖くては、話しかけられなかったのだと思う。

 鴇津さんを邪魔したくないっていうのは、建前だ。

 お節介を焼いて、嫌われたくなかったんだ。

 でも今は、嫌うどころか、むしろユウゴを気にかけているように見える。

 少なくとも、蔑ろにするような態度はとらない。

 そんな鴇津の変化に、ユウゴが気づかないわけがない。

 ユウゴの申し出を鴇津が受け入れる度、ユウゴはそれは嬉しそうにはにかむ。

 まるで長年の片思いが実った乙女みたいで、可愛らしくてリツも思わず笑みがこぼれてしまう。

 そんなリツに気づくや否や、ユウゴの顔がぶすっと不機嫌なものに変わる。


「なにニヤニヤしてんだよ。キモイな」


 しかしその耳は赤く染まっていて、リツのにやけ顔がおさまることはない。


「いや、うれしそうだなーと思って」

「べッ、別に……! テメエがムカつきすぎて、ムカつくんだよ!」

「照れんなって。そんなこと言ったって可愛いだけだぞ。
 そんな上機嫌な島田クン、ついでに俺にもココア買ってきてよ、温かいの」


 そう言ってやると、予想通り、容赦ない蹴りが飛んできた。

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