テキストサイズ

血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 リツは呆気なく椅子から落っこち、ユウゴに足蹴にされる。


「テメエ調子ノッてんじゃねーぞ!
 お前マジムカつくマジムカつく! 死にさらせッ、つーか殺ス!」


 ズカズカと肩のあたりを蹴られ続けるが、リツは特に反撃も抑しもしない。

 ただ「痛て痛て」と冗談ぽく言うだけ。

 ユウゴの蹴りは、ある意味スキンシップだ。
 少し激しめだが、ユウゴに蹴られるのは嫌いじゃない。

 ――なんか変態っぽいなと、自分で思って自嘲する。


「おい、行くなら早く行けよ。昼休み終わんぞ」


 鶴の一声。
 窓の外を見たままの鴇津の言葉に、ユウゴの情熱的な蹴りがぴたりとおさまる。


「すんませんしたっ。すぐ行ってきます!」


 脱兎の勢いで、ユウゴは保健室から飛び出していった。

 「アテテテ」と、リツは上体を起こす。

 肩の埃を払いながら、倒れた椅子を戻し、再び鴇津の隣に座る。


「大丈夫か」

「平気平気。いつものことだから」


 鴇津は外を向いたままそう言った。

 鴇津が心配の言葉をかけてくるなんて意外に思ったが、リツはあまり気にしなかった。

 きっと、今まで見てきた鴇津は、氷山の一角ぐらいにすぎないのだろう。

 もしかしたら、鴇津自身も気がついていないのかもしれない。

 きっと中心で透明に澄んだ彼は、これからいろいろな顔を見せてくれる。

 俺はそれを、何事もなく受け止めていけばいい。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ