血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
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1日6時限ある授業を全て終えて、リツは、鴇津と佐山とユウゴの4人で時雨にやってきた。
学校近くの商店街の奥の奥。
シャッターの下ろされた店ばかりが並ぶ一角に、喫茶店“時雨”がある。
紫鳳の中でも上位にいる者しか入ることを許されない、敷居の高い溜まり場だ。
それを重々承知している佐山からすれば、時雨にお邪魔するなど吐き気を催すほどに気を遣う。
しかしながらいつもの如く、リツにはそんなことどこ吹く風。
時雨につながる赤い扉を「ちーっす」と軽快に開け放つ。
そこにはすでに、紫鳳の幹部クラスが松根や土井を合わせて数人。
そしてその側近たちが数人と、保健室のメンバーたちがずらりと並んでいた。
「おせーぞリツ」
「マジメに授業なんか受けてんじゃねーよ」
そう声をかけてきた男たちも、リツと同じ霧金に通う先輩たちだ。
もちろん授業はあるのだが、まともに授業を受ける者などここにはひとりもいない。
元霧金の生徒で、中退した者だって何人もいる。
進学率10%以下。
霧金校というのは、そういう学校であった。
「おいリツ、やるぞ。今日こそ負けねえ」
「よっしゃ、受けて立つ」
リーゼント頭に言われ、リツは壁際の赤い皮が張られた6人掛けテーブルに向かう。
そこにはすでに3人が座っていた。
その3人の真ん中に広げられているのはトランプだ。
「何から行くか」
「そりゃブラックジャックだろ」
「今日こそオメーをベロベロにしてやる」
スクールバックをソファに投げるリツに向かって、リーゼントはビシッと指を差した。