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血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 三上は小柄で幼い顔立ちだが、ケンカはめちゃ強い――というわけではない。
 見た目どおりの、ふつうの男の子だ。

 そんな子が、紫鳳の中で上位にいる理由。それは百パーセント、東条の権限があってのことだ。


「東条さんも、あんな奴の何がいいんだ。
 従兄弟ってだけで甘やかされて、俺らのことなんか下僕としか見てねえぜ。
 あんな甘ったれが東条さんの隣にいるなんて、あの人自身の株が下がっちまうよ」

「まあ確かにな。
 東条さんにも恩義があるんだろうけどよ、寛大すぎる気もするよな。
 アイツのわがままにつき合わされる俺らのことも、ちょっとは考えてほしいぜ」


 東条は、三上に恩があるらしかった。

 東条の両親はデキ婚の駆け落ち夫婦で、しかも両親とも未成年で、とても裕福とは言えない家庭だったらしい。

 そんな母親が、重病を患ったのは、東条が小学生のとき。

 なんでも移植が必要なほどの病気で、治すにはアメリカへ行く必要があったらしいが、東条の家にはそんな費用もなく。

 母親には家族も親戚もおらず、頼る当てがなかった。
 父親の両親は、2人の結婚を認めていなくて、費用は出してくれなかったらしい。

 そんな状況を救ってくれたのが、東条の父親の姉さん夫婦である三上の両親だったようだ。

 三上の両親が渡航費と手術費を工面して、東条の母親はなんとか病気を完治させたという。

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