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血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 合わせて何億という金を用意するぐらいだ。
 三上の家は裕福だったようだ。

 なんでも、父親はでかい会社の重役だの社長だのだったらしいが、東条の母親の病気が治ってから少しして、三上の父親の会社が倒産してしまった。

 莫大な借金を抱えた三上の父親は自殺。
 母親と2人、残されてしまった三上を、今度は東条がいろいろ面倒を見ているのだという。

 これは全て佐山からの情報であって、リツには確証する材料など持ち合わせてはいない。

 しかし紫鳳の中ではそれが真実として認識されているようだ。

 だから、この手の話には何も言えない。

 皆は口々に文句を言っているが、リツはいつも他のことに集中していた。

 今も手札を『21』にするために山札からカードを引く。


「ぬあぁぁ、またブタだぁぁ!」


 ビリはまたもリーゼントに決定。
 グラスいっぱいに注がれた焼酎を一気する。

 さらに赤くなった顔で「もう一回だ!」とグラスをテーブルに叩きつけながら息巻くリーゼントを笑っていると、そのテーブルに影が落ちた。
 すぐ隣に気配を感じて見上げると、背もたれに寄りかかるように座る鴇津がいた。


「鴇津さんもやる? 負けたら焼酎一気だよ」


 リツはにやりと笑った。
 ケンカするところや、煙草を吸うところは見たことあるが、酔っぱらったところは見たことがない。
 鴇津が顔を赤らめた姿を想像したら、なんか楽しくなってきた。


「イカサマはありか」


 しれっとそんなことをいう鴇津に、リーゼントたちが「えっ!」と声をもらすが、


「バレなきゃいいんじゃない? 俺もやってるし」


 リツの言葉に、さらに声を荒げた。

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