血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
「寄れ」
鴇津は背もたれからすっと腰を上げ、リツの隣へ入ってきた。
6人テーブルの席に鴇津が入り、リツの座る側が3人になった。
肩が密着する。
端正な顔が、こんなに近くに寄るのは初めてだ。
座れば高さの差はほとんどない。
横を向けば近すぎるほどの所に、鴇津の顔がある。
サイドに流れた金髪。
鼻筋の通った横顔。
トランプを覗く、伏し目がちな目。
小ぶりな口に、シャープな顎のライン。
アップにも堪えうる顔立ちに、感心する。
そしてうれしかった。
ここまで近づいてきてくれることが、死ぬほどうれしかった。
こんな風に人を、みんなを、受け入れていってほしい。
人は独りでいるほうが楽だ。
誰も自分を乱してこないから。
でも、退屈だ。
段々と窮屈になってきて、何もかもがどうでもよくなってくる。
自分が何をやろうが何にも影響されない、そんなつまらない世界に閉じこもっていたら、頭がおかしくなる。
所詮人なんて、生きがいがなければ生きられないんだ。
鴇津には、生きてもらいたい。
ふつうに友達がいて、バカ騒ぎして食って寝て、たまにはみんなでケンカしたり悩んでみたり、そんなのでいい。
そんなのでも、人の生きがいには事足りる。
「何やってんの?」
鴇津が山札からカードを引いていると、三上がやってきた。
しかし一呼吸おいても、鴇津はもちろん、誰も三上の問いに答えない。
「ブラックジャックってゲームだよ」
そんな様子なので、リツが代わりに答えたが、三上はリツのことなど見向きもしない。