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血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 
「え、なんで!」


 『5』だったはずのカードが、引いてみれば絵札で、リツの手札は『21』を上回ってしまった。


「あれぇ、計算ミスったかな」


 手札を凝視しながら今までの行程を思い返していると、含み笑いが聞こえた。

 隣を見ればほくそ笑む鴇津の顔があって、リツはハメられたことを知る。


「うっそ! どうやったの? どこで? 全然わかんなかった」

「教えるわけねぇだろ」


 「そんなこと言わずに教えてよー」という緊張感の“き”の字もない声が時雨に響き、皆は呆気にとられ、三上はぷるぷる震えだした。

 バンと思い切りテーブルを叩かれ、リツも流石にはっとする。


「調子に乗るな! お前なんかがいていい場所じゃないんだここは!
 ここは清春の城なんだぞ!」


 キーの高い声が叫ぶ。
 大きい目を吊り上げて、頬も赤い。

 その剣幕に、リツは少し申し訳ない気分になった。


「ご、ごめん。じゃあ別のとこで遊ぶね。
 みんなでゲーセン行こうって話でてたから、そっち行くよ」


 丁度、トランプも勝負がついて切りが良い。
 リツは席を立った。

 それに便乗するように、隣の橋元も立ち上がる。


「そうだ、そうそう。ゲーセン行こうぜ!」


 さらにそれが合図になり、いそいそとみんなで動き出す。

 そんな流れに、三上は焦った。

 その横をリツは通り抜ける。


「すいません。あんま来ないようにしますね」


 リツはひとつ頭を下げた。
 その笑顔に、三上は呆気にとられる。

 リツが動くと、まるで波のようにみんなが同じ方向へ動き出した。

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