血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
「お前、今日バイト何時だっけ」
席を立つと橋元が、そう聞いてきた。
「6時だよ」
「じゃあ駅前のゲーセンにすっか。したらギリギリまで遊べんべ」
橋元と並んで時雨の外に出ると、橋元の顔があからさまに不機嫌になった。
そしてがしりと肩を組まれ、耳元に囁かれる。
「たく、あんな奴に謝んなくていいんだぜ?
ただのワガママなうぬぼれヤローだ」
「でも、俺が部外者なことには変わりないし。あんまでかい顔すんのも悪いよ。
あの人、ずっと紫鳳にいるんだろ?」
今でも十分でかい態度をとっているのだが、本人はそのことに気づいていない。
「誰も認めちゃいねーよ。東条さんのイトコでもなきゃあんなガキ――」
「ちょっと!」
橋元の言葉を遮るように、三上の声とともに赤い扉が開いた。
「みんなで行くことないんだよ。ここは“紫鳳”のたまり場なんだから、みんなでいつもみたいに騒ごうよ。
そうだっ。今日はたしか北高が工場で集会開くって言ってた。
もうすぐ清春も来ると思うし、みんなで乗り込もうよ。最近北高調子ノってるしさ」
そうまくし立てる三上を見る周りの目は冷たい。
皆口々にやる気のない言葉をつぶやき、三上に賛同する者はいない。
そんな彼らを代表するように、松根がはっきりと言った。
「別にいいんじゃないですか。
確かに最近イキがったヤツが多いけど、こっちの領域に手ぇ出してくるわけじゃねえし、それこそ殴り込みなんてすりゃ戦争になりますよ。
あんまり無責任なこと言わないでくれます?」
冷静な松根に、三上はたじろいだ。