テキストサイズ

血とキズナ

第7章 ニセモノ

 




   ◆ ◆





「ありがとうございました」


 レジに立つリナが、お客さんの会計を終えた。


「ありがとうございましたー」


 陳列された雑誌たちを整理しながら、リツも声をかけた。

 外はすでに真っ暗。
 そろそろお客の足がめっきり少なくなる時間帯だ。

 店内からお客がいなくなり、リナがレジから抜け出してきた。


「いやぁ、相変わらずヒマなコンビニだよねここは」

「ですね」


 このコンビニが混雑するのは、周辺の工場で働く人たちが昼食を買っていく朝だけ。

 昼間も客は疎ら。
 深夜の時間帯になってくれば、数時間に1人2人だ。

 よく潰れないなと思う。


「あっ、安東樹里!」


 リツが手にしていた雑誌を見て、リナのテンションが上がる。


「ハァ、やっぱキレイよね安東樹里。
 顔ちっちゃいし、足長いし細いし。こんな女に生まれたかったなぁ」


 リツから奪うように雑誌を手に取ったリナ。
 その賞賛ぶりに、リツは改めて表紙を覗き見る。


「だれ?」

「え! リツくん、安東樹里しらないの!?」


 リナの手の中で、雑誌がくしゃりと音を立てた。


「いや、まあ、この手の女の子はみんな同じに見えるというか。マネキンみたいで」

「へぇ、意外。リツくんてあんまり女の子に興味ないの?」

「そういうわけじゃないけど」

「この人、今結構テレビとか出てるわよ。
 結構性格もサバサバしてて、気取ってない感じがいいのよ。見たことない?」

「俺あんまりテレビ見ないんですよね」


 棚に並んだ雑誌や漫画をいじりながら、リツは答えた。

 寮でテレビがあるのは、食堂にだけだ。
 しかしそこは三年生の聖域で、食事以外の時間に入りでもしたら袋叩きに遭う。

 見ようにも見れない環境なのだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ