血とキズナ
第7章 ニセモノ
「ぼ、僕は、やっぱり知的な女性がいいですね」
リナの後ろから現れたのは、もう一人のバイト、山本秀樹。
分厚いレンズのメガネをかけた、ぽっちゃり体型の16歳。高校二年生である。
「ドジを気取るブリっ子なんて、むしろ嫌悪感しか感じない。
キミ、趣味悪いよ。
これだから霧金は。勉強だけじゃなくて、人を見る目もないんだな」
偏差値の高い大学付属高校に通う、俗にエリートと呼ばれる青年だ。
「腕っ節なんて、何の役にも立たない。そんなものしか取り柄のない連中なんてただのクズだ。
キミみたいな能無しのせいで、今日本の学力は下がっているんだ。
役に立たなくてもいいから、せめて邪魔はしないでくれよ。
ほ、堀田さんだって仕事できなくて困っているじゃないか。
キミのせいで店長に怒鳴られたんだぞ。謝ったらどうだ」
目をきょろきょろと泳がせ、何度もメガネをいじりながら、山本は挙動不審にまくし立てた。
山本の妙な勢いに、リツは思わず圧倒された。
「あー、謝ります?」
「いーや」
リツはリナの顔を覗き込みながら聞くが、リナは呆れ顔で首を振る。
「私、検品してくるわ」
リナは足早にレジの奥に引っ込んでいった。
リツと2人きりになると、山本はまたメガネを押し上げた。
「綾野くん、店の裏がちょっと汚くなってたから掃除してきてよ。
キミみたいな奴が接客なんてしたら評判悪くなるからさ」
山本の命令にもリツは嫌な顔一つせず、二つ返事で外へ出て行った。