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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 すると山本は頬をゆるませ、軽い足取りでレジへ向かった。

 バイトを始めた日、山本はリナに一目惚れをした。

 1年近くアプローチを続けているが、距離が縮まることはまるでなく、それなの突然現れたリツとはあっという間に打ちとけ、恋愛トークまでする始末。

 自分よりレベルが下の男が、自分の思い人と親しげなのが気にくわないのだ。

 レジから裏をのぞき込むと、そこには商品を検品するリナの姿がある。

 山本は深く息を吐き、メガネを持ち上げた。


「まったく、これだからバカ校の奴は困るんだよね。
 ほ、堀田さんもあんな奴とつき合わないほうがいいですよ。
 それに比べて、ほら僕みたいな一流校の人間はさ」

「口動かしてないで仕事しなよ。
 リツくんに偉そうなこと言って、自分がサボってんじゃないわよ」


 ぴしゃりと言い放つリナに、山本はびくりと顔を引きつらせた。


「あ、あぅ、そ……さ、サボリじゃないよ。ちょ、ちょっとした雑談じゃ」

「あのさ、こっちは仕事してんの。アンタみたいなのKYって言うのよ」

「KYって古くね?」

「いいじゃないですか別に!」


 店長の指摘に、リナは目を尖らせた。


「てか、お前がそれを言うか。さっきまで散々サボっといて。
 しかも雑誌までダメにしやがって、給料から引いとくからな」

「え゛! そんなこと言わないで店長~」

「くっつくな! テメェさっきブリっ子嫌いつったんじゃなかったのかよ」

「それとこれとは別なんです!」

「だぁーウゼェ。
 山本、お前もさっさと働け」


 山本は小さく「はい」と呟き、陳列の整理へと向かった。

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