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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 パンやおにぎりをいじる山本の手が、乱暴に動く。


「くそっ、なんであんな奴がいいいんだっ」


 不満を口にしながら商品を整理していると、来客を告げる音が店内に流れる。


「いらっしゃいませー」


 怒りが瞬時に身を潜め、クセのあるイントネーションで山本は挨拶した。

 しかし入口は、山本のいるパンの棚とは反対側にあるため、客の顔は見えない。

 お客が商品を選び終わるまで商品を並べ直していたが、お客は早々に商品を手にレジの前へ行った。


「いらっしゃいま……せ」


 レジの中に入り、山本は一瞬息を詰まらせた。

 目の前に立つ男は、自動ドアより大きい。
 そのくせ体格は異常に細く、手足と髪が非常に長い。

 何より息を詰まらせたのは、顔面の入れ墨だ。

 良いところのお坊ちゃんである山本にとって、こんなにイカツいお兄さんなんて、テレビの中でしか見たことがなかった。

 そんな男だが、彼は山本と同い年である。

 山本が茫然と立っていると、男が台に肘を付け山本の顔に、鼻先がくっつくほど自分の顔を近づけた。


「おい、リツいねえのか。リツ」

「へ……?」


 山本の声が恐怖で裏返る。


「綾野リツだよ。いんだろ」

「あ……は、ハイ。そ、外にご、ございます」

「あーそ。じゃあ呼んできて」

「た、ただいまッ」


 山本がレジを出ようとした時、ちょうど自動ドアからリツが入ってきた。

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