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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 最近バイクに乗る頻度が多いということで、リツはホームセンターの安いヘルメットを買って、鴇津のバイクに置きっぱなしにしている。

 バイクに乗る頻度が高いといっても、それは100パーセントが鴇津の単車だ。
 置きっぱなしには何の問題もない。
 強いて言えば、鴇津が嫌な顔をするぐらいだ。


「鴇津さんはさ、どんな女の人がタイプなの?」

「――あ? なんだいきなり」

「いやね、さっきそんな話になってさ。鴇津さんはどうなのかなー、って」


 鴇津はまるで興味なさげな顔で、ヘルメットを被った。


「女なんてどれも一緒だ」

「そんなことないっしょ。ちょっと目のいくような子とかさ」

「ねぇよ、そんなもん」


 鴇津の言動に、リツははっとした。
 そして、恐る恐るそれを口にする。


「もしかして、鴇津さんて男が好きなの?」

「ア゛?」

「あれ、違う? ――あだっ」


 たった今被ったばかりのヘルメットが飛んできて、リツの頭にすこーんとぶつかった。

 ヘルメット越しとはいえ衝撃はそれなりで、リツはしゃがみ込んだ。


「テメェの思考回路はどうなってんだっ。キメェこと言ってんなよ」

「だって、女なんて興味ないって言うから」

「興味ないなんて言ってねぇだろ。どれも一緒だっつったんだよ」


 ヘルメットのなくなった鴇津が、憤慨そうに顔をしかめている。


「あれ、そうだっけ」


 おーイテ、とリツは地面に転がった鴇津のフルフェイスを拾った。

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