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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 
「女なんて所詮ヤることヤりたいだけだ。それにタイプもクソもねぇよ」

「ふぅん。そういうもん?」

「そういうお前はどうなんだよ」

「俺? 俺はちょっと抜けてる子がいいって言ったんだけど、そしたら女の先輩にボロクソ言われた」


 そんな言われるほどのことかね、と拾ったヘルメットを鴇津の太腿の上に乗せた。

 しかし鴇津は「さあな」と一言だけ。今度こそヘルメットを被った。

 そして、リツが鴇津の後ろに座ってバイクが発進しようしたそのとき、男の声が聞こえた。


「リツ!」


 その声にリツははっとする。
 そこに立っていたのは、息を乱しネクタイを緩めたスーツに身を包む男だった。


「いや、駅からこんなに遠いとはなぁ。でも間に合ってよかったよ」


 ハンカチで汗を拭い、ノンフレームのメガネをの位置を直す。
 その姿に、リツは思わず顔をしかめた。

「――何であんたがこんなとこにいんだよ」

「寮の前にいたら佐山くんっていう子に会ってね。この時間はバイトしてるって聞いたから」


 ワイシャツを扇いだり、ハンカチを首にあてたりしながら、流星は爽やかな笑顔を浮かべている。

 そんな流星の顔が、リツは嫌いだった。


「バイト先にまで来んじゃねぇよ。うぜえ」

「うん、ごめん。
 でも、一目会いたくて」


 うれしそうに笑う流星に、リツは「うぜ……」と、歯を噛みしめた。


「俺はあんたに会いたくない。帰れ、二度と顔見せんな。
 ――行こう鴇津さん」

「あ、あぁ」


 少し戸惑い気味に鴇津はアクセルを回し出す。

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