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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 誰が何をしようと何をされようとどうでもよかったに、彼の言動や行動は、鴇津を掻き乱す。

 それが怖くて、離れようとした。

 だがその瞬間、リツに腕を掴まれてしまった。

 三上が糾弾されたあの日。

 もうリツに関わるのはやめにしようとバイクに跨がった。
 そう決めたまさにあの時、まるで見透かしたように、リツは鴇津を離さなかった。

 その時の、一瞬見せた不安そうな表情が、鴇津を驚かせた。

 人が何をしようと、人に何をされようと、どうでもよかった。
 それと同時に、自分が何をしようと、誰もがどうでもよかった。
 自分のやることなすことに、意見も文句も言う奴などいなかった。

 それなのにリツは、不安げな顔をした。

 ただただ驚いた。

 リツの表情そのものと、リツの仮面のような笑みを消した自分自身とをだ。

 そう思ったら、身動きがとれなくなってしまった。

 コイツと、どう接していけばいいかわからない。

 どうしたいのか、どうすればいいのか。

 ただ言えることは、きっともう、綾野リツからは離れられないということ。

 そう思い知らされたのは、リツの兄が現れたあの日からだった。





 

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