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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 
「すいません、いつもリツを迎えにきてくれている方ですよね?」


 しっかりとアイロンのかけられたスーツに、ノンフレームの眼鏡。
 おなじみの風貌で、流星が近づいてくる。


「何ですか」


 バイクの腹側に立つ流星に、鴇津は言った。


「えっと、いつも弟がお世話になってます。
 送り迎えまでしていただいて、その、ご迷惑をお掛けしてすいません」


 ぺこぺこ頭を下げる流星に、鴇津は何も言わない。

 そんなことを言うために、こんな所へ来たわけではないだろう。

 本題を急かすように、鴇津は睥睨した。

 それに気づいたのか、流星は申し訳なさそうに愛想笑いをうかべる。


「えっと、今更なんですけど、僕、リツの兄の綾野流星と言います。
 君の名前、聞いても良いかな」

「――鴇津です」


 名乗りたくはなかったが、話を進めてもらうため、簡素に呟いた。


「鴇津くん、リツといつも仲良くしてくれてありがとう」

「そんなのどうでもいいから、用件があんなら早くしてくれますか」


 流星としゃべりたくないわけではない。
 むしろ彼は、リツの兄である。
 リツのことを、よく知っているはずだ。
 だからこそ、どうでもいい前置きがじれったくて仕方ない。


「ご、ごめんね。
 えっと、こんなこと君に頼むのはお門違いなのはわかってるんだけど」


 真面目すぎてイライラする。
 彼の発する一音一音に、苛立ちが募った。

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