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血とキズナ

第7章 ニセモノ

「その、リツと僕を引き合わせてくれないかなと思って」

「……は?」


 突拍子もないお願いに、さすがの鴇津も言葉を失った。


「リツを連れ出してほしいんだ。できれば土曜日。
 場所とか時間は、君が連れ出し易いところでいい。
 土曜日なら僕は休みだから合わせられるし」

「なんで俺がそんなこと」


 流星を遮るように言った。

 確かに土曜日は、リツのバイトがない日だ。
 会おうと思えばいつでも会えるだろう。

 しかしそんなことは当人同士で勝手にやってほしい。

 そんな話ならごめんだと、鴇津はバイクにカギを差し込んだ。


「ちょっと待ってっ。迷惑なのはわかってるんだけど、僕だけじゃ逃げられちゃうんだ。頼むよ」


 バイクの進路を塞ぐように、流星は立ちふさがった。


「どけよ」

「ごめんね。でも、どうしてもリツと話がしたいんだ」

「だったらリツと直接やってくれ。俺には関係ない」

「そうなんだけど、僕だけじゃ無理なんだ。君にもわかるだろ?」


 確かに、リツの避け方は本気だ。
 だからこそ嫌なのだ。

 お節介こそ、鴇津が一番気持ち悪いと感じる行為。
 自分がそんな人間に成り下がるなんて、まっぴら御免だ。


「だから、そんなことは俺には関係ない」


 鴇津は、ハンドルを切って進路を変える。

 しつこい兄からさっさと逃げたくて、鴇津はすばやくエンジンを回した。

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