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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 
「わかった、待って! もう頼まないから、少し話を聞かせてっ」


 流星は、必死の形相で鴇津の前に立ちふさがる。

 貧弱な見た目に反して、流星は押しが強い。

 それは、鴇津が思わずアクセルを緩めてしまうほどだ。

 流星には、見た目や、その場の空気に呑まれない、意志の強さがある。

 そういうところは、どことなくリツと似ているような気がした。


「リツは、どんな風な生活してる?」

「どんなって」


 あまりに抽象的な質問に、鴇津は戸惑う。


「友だち関係とか、授業態度とか、何でもいいんだ」

「授業態度とか言われても、学年は違ぇし。
 友だちは多い方じゃないですか。
 佐山って奴とは、ほぼ24時間一緒にいますよ」

「あぁ佐山くん。あの子いい子だよね」

「ケンカもあんましないし、比較的に平和に過ごしてんじゃないすかね」

「そっか、ケンカしてないんだ。ちょっと安心した」


 流星は胸をなで下ろした。


「でもケンカは強いですよ。本人が無頓着なだけで。
 昔はやんちゃしてたんじゃないですか」


 リツは、なんだかんだで場馴れしている。

 悪餓鬼たちに絡まれても囲まれても、まったく怯まない。
 それどころか、その場の上手いやり過ごし方を知っている。

 天ヶ瀬明日斗とそれほどの仲ということで、それは確実だろう。

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