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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 明日斗の名は、鴇津も中学のときから知っていた。
 流れる噂が独特で、印象に残っている。

 力と暴力の世界は、一度足を踏み入れたら中々出られない、蟻地獄のようなところだ。

 恨み恨まれ。妬み嫉み。

 それらがついて回る、粘着質で執念深い世界だ。

 だが一方で、単純明快な世界でもある。

 力の有る者だけが生き残り、無い者は支配される。

 力のあるはずの明日斗やリツが、それに興味を示さないことが不思議だった。

 リツのことがもっと知りたい。
 鴇津がそれとなく振った話に、流星は苦笑しながら頷いた。


「うん――。
 あの子は本当に複雑なところで育ってきたから」

「親。いないんですよね」

「リツから聞いた?」

「親がいないってことと、あんたと血が繋がってないってことだけ」


 難しい顔を浮かべながら、流星は頭をかいた。
 うーん……と唸って、次に流星はすっと顔を上げた。


「鴇津くんから見て、リツってどんな子?」

「は?」


 鴇津が間の抜けた声を上げるが、すぐに流星が話出した。


「正直のところ、僕はあんまりリツのこと知らないんだ。

 両親が死んで離れ離れになって、しばらくは結構会ってたんだけど、僕がリツに酷いことをしちゃってね。
 リツが荒れたのはそれからだよ。
 それ以来、まったくと言っていいほどリツとは話してないんだ。
 話しても、いつもあんな感じでね。
 まあ――、悪いのは全部僕なんだけどね」

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