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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 リツと違い、流星の表情はわかりやすい。

 遠い目で回顧し、そして後悔しているようだった。


「ちっちゃい頃は可愛くて、物怖じも人見知りもしなくて。
 友だちも多くて、先生方からもよく褒められたよ」


 それは、今もほとんど変わらない。
 物怖じしなさすぎて、戦渦のど真ん中にいても気がつかないのだから。


「僕は、小学生のリツしか知らないんだ。
 だから、今どうしているのかとか、悩みとか、何にもわからなくて。
 ただ、心配なんだ。今にも、どっかにいなくなってしまうんじゃないかって……」

「それは大丈夫ですよ」


 鴇津は徐に、しかしはっきりとした口調で言った。
 その言葉に、流星は目を丸くする。


「アイツは、やりたいことがあってわざわざこの学校に入ったんだ。
 少なくともそれが終わるまでは、いなくならないさ」


 それだけは間違いなく言える。
 リツの意志の固さは並ではない。

 リツが明日斗との約束を放棄してどこかへいなくなることは、絶対にない。

 そんなことを確信している自分に、鴇津はため息をついた。

 やはり自分は、リツを認めているということを実感してしまう。

 それに、リツに対する自分自身の思いを言葉にしたことで、なぜかすっきりしてしまった。

 自分の思いを口にするなど、ほとんどやったことがなかった。

 何かに対して、何かを思うこともなく、今までやってきたのだから当然だ。

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