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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 
 玄関ではなく、駐輪場で鴇津を待つこと5分弱。

 リツの姿を捉えた鴇津が一瞬、ぴたりと歩みを止めた。

 玄関にいるはずのリツが駐輪場にいて、少し驚いたのだろう。


「鴇津さん」


 リツが呼びかけると、鴇津はばつが悪そうに近づいてきた。

 白のVネックの上にジャケットを羽織り、細身のパンツ。

 カジュアルな格好だが、鴇津は何を着ても様になる。


「玄関でつったよな」

「うん。でもここで待ってたほうが早いと思って」


 わかりやすく浮かれているリツだが、鴇津の態度はいつも通り。とてもクールであった。

 すっとリツの前を横切り、鴇津は愛車を駐輪場から引っ張り出す。


「お前、腹は」


 鴇津はシートをあげ、ヘルメットを取り出した。

 リツはそれを受け取り、装着する。


「あんまり空いてないけど。鴇津さんが空いてるなら付き合うよ」

「じゃあ、軽く食ってから行くか」

「わかった」


 鴇津がバイクに跨がると、リツも慣れた様子でその後ろに座る。

 目の前の背中を見るだけで、リツは笑みをこぼした。

 まさかの、鴇津からの誘い。

 それだけで、リツの気分は最高潮だった。

 鴇津が変わっていく。

 それがうれしかった。

 エンジンがうなり声を上げる。
 鴇津が手首を返せば、その声は勢いを増し、動き出した。

 門を出れば住宅の密集する小道だが、鴇津は遠慮なくエンジンを吹かす。

 バイクは勢いよく走り出し、あっという間に大通りへと繰り出した。

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