テキストサイズ

血とキズナ

第7章 ニセモノ

 大通りを走ること数分。

 人の賑わいだす、駅近くの通りまでやってきた。

 コンビニやファミレス、ゲームセンターやボーリング場といった娯楽施設もたくさんある。

 霧金高校の最寄り駅のため、この2ヶ月で馴染んできた地域だ。

 鴇津は一軒の喫茶店の前で、バイクのスピードを落とした。

 エンジンを止め、ヘルメットを外しながら、鴇津バイクから降りる。
 リツもそれに倣った。


「ここ?」

「ああ」


 オシャレなカフェというよりは、隠れ家的な店である。

 間口が狭く、中の様子は見えない。
 木製の扉に“OPEN”と書かれた板だけが、吊されていた。

 普段、もっぱらファミレスを愛用するリツにとって、こういった店には馴染みがなく、とても新鮮だ。

 オトナだなぁと、リツは感心する。


「先入っててくれ。金下ろしてくるから」

「あ、わかった」


 見慣れない飲食店に見とれていると、鴇津は一人、近くのコンビニへ向かってしまった。

 慣れない場所に、若干気後れ気味だ。

 とはいえ、リツはこういった初めてのことに好奇心を抱きやすい質だ。

 人見知りや物怖じという言葉など、知りはしない。

 リツは少し胸を高鳴らせながら、ノブを回し扉を引いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ