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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 カランコロンと、ドアベルが軽快な音を鳴らす。

 内装は狭く渋い木造で、落ちついた雰囲気が漂っていた。
 客も多くなく、入ってすぐのカウンター席に一人と、テーブル席に三組。
 女性客はおらず、スーツを着た男性が、コーヒーを片手に読書や仕事など、各々の時間を過ごしている。

 ファミレスの賑やかな空間しか知らないリツにとって、そこは大人な空間に感じられた。

 内心ドキドキしながら店内を観察していると、30代半ばほどの男性が、笑顔で迎えてくれた。

 ファミレスとは違う柔和な接客に、リツの動悸も治まってくる。


「何名様ですか?」

「2人です」


 リツがそう告げると、壁際の二人席へ案内された。

 少し重厚な感じのある壁とは違い、テーブルと椅子は少し明るめで、その差がなんとも心地良い。

 席に腰をかけると、リツはメニューを開いた。

 やはりカフェなだけあって、ドリンクのメニューが豊富だ。

 コーヒーやカクテルなどの種類に全く無知なリツには、さっぱりわからない名称が並んでいた。

 その品々を見てリツは、鴇津が好きなのものどれだろうと想像する。

 よく煙草を片手に、ブラックの缶コーヒーを飲んでいるが、ブラックコーヒーでも種類はある。

 見たことも味わったこともない銘柄を見ながら、これは格好いい。これは甘そう。名前長い。など、勝手に文句をつけていた。

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