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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 普段、コンビニのおにぎりやカップ麺を食べる姿はよく見るが、こういった所で外食をする鴇津の姿はイメージにない。

 考えてみれば、鴇津と寮の食堂以外で食事をするのは初めてだ。

 そう思ったら、店に入ったとき以上にワクワクしてきた。

 鴇津は、どんなものが好きなのか、どんな風に食べるのか。
 そんな小さなことでも、鴇津のことだと興味が湧く。

 普段から、鴇津はあまり人間味を感じさせない。

 ケンカで傷を負っても、痛そうな素振りは一切ないし、好きであるはずのバイクに乗っているときでさえ、普段と表情が変わらない。

 眠そうにしたり、ダルそうにしたり、悪口を言ったり、人を褒めたり、物を欲しがったり。
 みんなが日常で何気なく当たり前にすることすら、鴇津はしない。

 食事に関しても、好みは全くわからない。

 いつもユウゴに買ってきてもらったものを、手当たり次第に食べているし、カップ麺も味はいつもばらばら。

 あるものに嵌まったら、そればかりを口にするリツとは正反対だ。

 鴇津が何かに能動的な姿を、リツは見たことがなかった。


 だから、わざわざ電話をして、自分を誘った鴇津の行動に、リツは感激したのだ。

 メニューを見るだけ見て何も頼まず、リツは水だけもらって鴇津を待った。

 せっかくなら鴇津といろいろ会話でもしながら、メニューを決めるほうが楽しそうだと思ったのだ。

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