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血とキズナ

第7章 ニセモノ

「何も頼まないのは失礼だから、何か頼もう。何がいい?」

「いらねぇ。どうでもいいけど、5分きっかりで帰るぜ」

「わかってる」


 店員を呼ぶと、流星はホットチョコレートを2つ頼んだ。

 リツはだらしなく椅子にもたれかかり、履き古したジーパンのポケットに手を突っ込む。

 早く5分が過ぎることを願った。


「学校はどうだ? 楽しくやってるか?」

「ああ」

「鴇津くんも、あまりケンカはしてないって言ってた。
 怪我もしてないみたいで、安心したよ」


 1、2週間前までギブスをしていたが、わざわざ話題を提供することもない。

 リツは軽く息を吐き、暇つぶしに店内を眺めた。


「バイトはどうだ? ちゃんとやれてるか?」

「ああ」

「大変なら、寮費ぐらい父さん達の貯金から出せるんだから、別にリツが払わなくてもいいんだよ?」

「いらねぇよ。高校の寮費なんて、大した額じゃない」


 霧金に行くことも、そこの寮で暮らすことも、リツ自身が決めたことだ。

 明日斗のカリを返すために来たのに、それについて人の金を使うことなんてことはしない。

 明日斗のカリに、変なケチが付くようで嫌なのだ。

 明日斗のカリは、自分の力だけでちゃんと返したい。


「学費も、返すから」


 しかし、学費は両親が残したお金から出してもらっていた。
 中学生に、高校の学費を払う力は、どうしたってなかった。

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