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血とキズナ

第7章 ニセモノ

「気にしなくていいって言ったろ?
 僕とリツのために残してくれたものなんだから、リツが使っていいんだよ」

「あんたの父さんが働いた金だろ」

「お前の父さんだ」


 流星は強い口調でそう言った。
 リツが流星を睨む。
 そして流星も、まっすぐリツを見つめた。


「お待たせいたしました。ホットチョコレートです」


 テーブルに、マグカップが置かれる。

 ゆったりと上がる湯気が流星の顔覆い、リツは視線を外した。

 リツと流星は、親同士の結婚で兄弟になった。

 リツが母親で、流星は父親。

 だからリツは、父とも血の繋がりはなかったのだ。

 リツと視線が離れると、流星は頭を掻いた。


「リツ、血なんか関係ないよ。ずっと一緒に暮らしてて、父さんは、リツのこと本当に可愛がってたよ。
 それはおまえもわかってただろ?」


 親同士が結婚したのは、リツが1歳のとき。
 だからリツはずっと、本当の父と兄ではないと知らずに過ごしていた。

 それを知ったのは、父と母が死んで、1年後のこと。

 それまでは、父も兄も、リツの中では家族以外のなにものでもなかった。

 父と兄は、過度にリツを可愛がっていた。
 むしろ母のほうが父親役のように、どっしりと構えていて、リツは父や兄とくっついていることが多かったのだ。

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