血とキズナ
第7章 ニセモノ
「リツ、今年はお母さんたちの墓参り、一緒に行かないか?
行ってないだろ? ずっと」
リツは、ホットチョコレートに口をつける。
まろやかで濃厚な甘味が口の中に広がり、驚いた。
山梨の駐車場で鴇津にもらった、缶のココア。
そこから、リツはココアにハマっていた。
それまでココアを好んで飲んだことはなかったが、それからは自販機の前に立つたびに、ココアが目に入ってくるようになって、今では好物だ。
そんな缶のココアとは、全く違うこのホットチョコレートに、リツは気鬱になった。
――なんでこれを飲んでいるのが、この人となんだろう。
今日は鴇津と遊びに行く予定で、ここへも鴇津とくるはずだったのに、目の前にいるのは、この世で一番会いたくない人間。
この状況に、リツは憤りを感じた。
「僕も社会人になったし、リツも高校生になってちょうど節目だし、一緒に顔を見せに行こう」
「ヤダよ。なんであんたと」
「僕とが嫌なら一人でもいいから、顔見せてやって。
父さん、会いたがってると思うから。もちろん、お母さんも」
リツは何かに対する当てつけのように、一気にホットチョコレートを喉に流し込む。
美味いホットチョコレートに、苛立った。
目の前の兄にも、この状況にも。
そして、こんな展開を作った鴇津にも、無性に苛立ちが募った。