血とキズナ
第7章 ニセモノ
「それから、夏休みは帰って来いよ。
さすがに寮だって、閉鎖になる期間があるだろ?」
“帰る”という言葉が、リツには引っかかった。
帰る場所なんて、自分にはない。
少なくとも、彼の家ではない。
いけしゃあしゃあと、リツを自分のものと考えている流星の態度が、腹立たしい。
何度言っても、彼には伝わらない。
どんなに暴言を吐いても、へこたれない。
いい加減に、愛想を尽かせばいいものを――。
「リツが何と言おうと、僕はリツの保護者だからね。
だから僕の家は、リツの家だ」
建て前なんてどうでもいいことだ。
未成年だから、学校へ行くにも、働くにも保護者が必要。それだけである。
そこに家族とか愛情とか、そんなものはいらない。
「それから、伯母さんたちに言って、リツの物は全部僕が引き取ったから」
「――は?」
霧金の入学式の日。
部屋にまとめた置いた、あの山を思い出す。
伯母さんに捨ててくれと頼んだ、過去のもの。
流星の言葉に、リツの底に沈澱した黒いものがどろっと動き出す。
「伯母さんたちに聞いたら捨てるとかいうからさ。
教科書とか、学校の作品とか、制服とか。
まとめてあったものは、全部うちにあるよ。
2人で住むつもりだったから、ちゃんとリツの部屋もある。
だから、何かあったらうちに――」
「勝手なことしてんなよ!」
それが急速に外へ噴出し、リツの頭は真っ白になった。