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血とキズナ

第2章 腕

「ばぁーか!
 誰だかわかんねー奴を、東条さんに会わせるられるわけねーだ――、ろッ……と♪」

「ズカズカと乗りこんでくんなんて、アホだなお前ら」


 耳障りの悪い呻き声と鈍い音が、店内に響く。

 しかし、そんな下卑た空気を一掃するような、清澄とした声が次の瞬間染みわたる。


「お前ら、止めな」


 その一言で、男たちの動きは止まる。

 その男たちの視線の先。

 店内の一番奥には、赤い皮のソファがあった。

 そこには、3人のシルエットが見える。

 ソファに腰掛け、グラスをあおる小柄なもの。

 背もたれに寄りかかり腕組みをしている影。

 そして、ただどかりと腰を下ろしている男。

 どれも、薄暗くて顔がはっきりとはわからなかった。


「お前、明日斗の知り合いか」


 再び、あの声が耳をなでる。
 それは中林の心を癒した。


「ハ……ハ、イ」


 殴られすぎて、口がうまく回らない。


「そうか。じゃあお前、カギのこと知ってんな?」

「……ハイ」

「持ってるのか」

「い、いえ……」


 中林の中に、わずかな光が生まれた。
 切れた口角が動く。


「でも、明日斗くんから話は聞きました。だから――」

「だから――何?」

「……え?」

 

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