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血とキズナ

第7章 ニセモノ

「でもさ、それが責任を感じてるってことじゃねぇの?」

「責任も、感じてるってだけだろ。兄として、ふつうに接してるだけじゃねえのか」

「鴇津さんはアイツの味方かよ」


 リツは口を尖らせ、拗ねたふうに見せる。

 父と兄と血の繋がらないリツ。
 その上、実は母親も、本当の母親ではなかったのだ。


「違えよ。ただ、お前があんなにムキになるなんて、らしくないと思ったから、会って話してみりゃいいんじゃねぇかと思っただけだ」


 リツが母親だと思っていた女性は、リツの実父の妹であったらしい。

 病弱であったリツの実母が、リツを出産したことをきっかけに命を落とし、そのことに耐えきれなくなった父は、妹にリツを託し蒸発してしまった、という経緯で、彼女はリツの母親になったらしい。

 このことは、親戚と流星から聞いたことであるから、リツは“らしい”ということでしか語れない。


「話したって変わんないよ。俺はアイツ嫌いだもん」


 ただ“そのこと”は、当時10歳の少年に、とてつもない疎外感を与えた。

 自分だけが偽物だと知った少年は、おかげでその後数年は荒れ狂い、学校や伯母さん家族に多大な被害をもたらした。

 伯母さんたちからは疎まれ、学校では問題児という種類にカテゴライズされ、警察とは顔見知りになるほどお世話になった。


「お前にとったら酷なことだったろうけど、仕方なかった事じゃないのか。
 悪いのはその親戚だろ」

「わかってる。今思えば、そうだと思うよ」

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