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血とキズナ

第7章 ニセモノ

 そんな荒れに荒れたリツを立ち直らせたのが、中学二年目に出会った、天ヶ瀬明日斗だった。


「なら、なんで」


 鴇津は、驚いたような表情を浮かべた。

 リツは首に手を置きながら言った。


「さあ。なんでだろう」


 しかし、そんな明日斗との付き合いも、たった二年弱で終わってしまった。

 ふつうの公立高校に合格していたリツだが、明日斗の行くはずだった霧金を受験し直し、入学し、そして今、鴇津のポテトを勝手に摘んでいる。

 そんな事情を、鴇津はすべて流星から聞いたのだった。


「そういう鴇津さんはどうなのさ。鴇津さんばっか俺のこと知っててズルいよ」


 最後の一本を、リツは口にくわえた。


「ずっと施設にいたって聞いたけど、親のこととか知らないの」

「ああ」


 鴇津は言葉少なに呟く。


「何も?」

「ああ。生きてんのか死んでんのかも知らねえ。
 ――生後1ヵ月ぐらいのときに、施設の前に捨てられてたって聞いた」


 鴇津の口から、少しずつ言葉がこぼれてきた。
 リツはそれに、黙って耳を傾ける。


「名前も誕生日もわからなかったらしいから、誕生日は拾われた日で、名字も名前も、市長だかが付けたって聞いた。それで戸籍も作ったらしい」


 鴇津は空になったカップを両手で抱き、視線もそこに落としている。

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