テキストサイズ

血とキズナ

第8章 レース

 
「お前、ホントリツのこと好きな」

「ア?」


 背後から声が聞こえたと思えば、同じクラスである松根が、鴇津の隣に椅子を寄せてきていた。


「登下校一緒だわ、バイトまで送ってやるわ、休日もどっか出掛けるだろ?
 付き合ってんの? もしかして」


 にやついて、明らかにからかってきている松根に、まともな相手などしない。

 鴇津は窓から、何を書いてるかもわからない黒板に目を移す。

 実はイヤホンをしたままなので、松根の言葉はあまり入っていなかった。
 そのまま無視を決め込もうとしたが、松根は鴇津のイヤホンを片方引っこ抜いた。

 鴇津は眉間に深いシワを作り、松根を睨みつけた。


「それはともかく、実は最近、ちょっと気になることが起き始めたんだ」


 松根の顔が真剣なものへと変わる。


「どうも最近、南高の奴らがイキガり始めてな。こっちに手ぇ出してくるようになりやがった。
 俺らの下っぱも、何人もヤられてる。
 ウワサによりゃあ、ド強い転校生が来たらしい。近々デカい戦争になるかもしんねぇ」

「だから何だってんだよ」


 この手の話に、鴇津はまったく興味がない。

 どうでもいい話を長ったらしく話す松根に嫌気がさした鴇津は、席を立った。


「おい、鴇津っ」


 制止も聞かずに教室を出る鴇津だが、追ってきた松根に思い切り肩を引かれた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ