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血とキズナ

第8章 レース

 
「どう責任とれってんだ」

「なんだ、とる気があんのか。ずいぶん弱気だな」

「テメエこそ、あいつがそう簡単にカギ奪わせると思ってんのか」

「いや。そんな心配なんざまったくしてねぇんだけどな」


 かっかっか、と能天気に笑う東条に、鴇津は苛立つ。


「んなことより、心配な事があんだよ」


 頭上から聞こえる声に、少し真面目な色が滲む。


「この騒動が落ち着いた辺りで、俺は引退しようと思うわけだ」


 その言葉に、鴇津はとりわけ驚きもしなかった。

 東条も三年で、また彼は一年の頃から紫鳳のトップという座に身を置いている。

 いつ次に世代交代しようとも、何らおかしくない。


「しかし問題がある。
 今の紫鳳ん中にトップを張れるような奴が、どうもいねえんだわ」


 この近隣は不良校が点在し、争いの絶えない地区なのだがここ数年、大きな揉め事は起きていない。

 その理由は、東条が紫鳳のトップになり、圧倒的な力を見せつけたからに他ならない。

 紫鳳はそんな東条を崇拝する連中の集まりなのだが、ゆえに東条に染まりきっている。

 鴇津には、彼の考えていることはなんとなくわかる。


 ――つまらないのだ。

 

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