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血とキズナ

第8章 レース

 東条は快楽主義者で、ケンカや揉め事、みんなでバカ騒ぎするのが大好きな男で、誰も信用せず、ひとりでやってきた鴇津とは、ある意味正反対の性格だ。

 東条は頭がきれ、周りの人間をよく見ていて、その人間の弱点をすぐに見抜く。

 見抜いた上で、相手の神経を逆撫でするようなことをしたりする。

 そこが鴇津は嫌いなのだ。

 東条には、ただ己について来るだけの連中しか周りにおらず、力も獲得しすぎて挑んでくる者もいない。
 退屈しているのだ。

 そんな変化のない連中の中から次のトップを選ぶのもまた、つまらないのだろう。

 東条がどうするのか、その問題は鴇津もそれなりに興味があった。

 鴇津とは似ても似つかない性質の男だが、東条は鴇津の認める、数少ない人物の一人だ。


「そこでだ。
 俺的にはお前にやってもらえると、とっても楽しいんだけどな」

「ふざけんな」


 この選択は、鴇津が霧金に入っときから聞いている。

 入学からそれとなく誘われ続けているが、族の総長などに興味はない。

 きっと鴇津がうんと頷いていたら、すぐにでも東条はその座を鴇津に渡していただろう。


「お前みたいな奴が上に立ったら、面白いことになると思うけどな」

「そう思うのはテメエだけだろ」

「そんなこともねえと思うぞ」


 鴇津は短くなった煙草を地面に押し付け、2本目に火をつけた。
 東条と話していると、煙草が進む。

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