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血とキズナ

第8章 レース

 液晶にリツの言葉が並ぶ。


(だって体操着わすれたんだよ。
 友達からジャージだけ借りたから、脱いだら変態になる。

 ぶっと吹き出した。
 携帯を握りながら、鴇津は笑いを堪える。

 抑えられない笑顔を浮かべながら、画面をスクロールする。


(鴇津さん今どこにいるの?)


 鴇津は簡素に返事を入力する。
 リツの返事は早い。


(屋上)

(いいね♪
 昼そこで食べたい。
 授業終わったら行くから待ってて)


 鴇津は返事を送らなかった。

 わかった。と、二つ返事を送るのが照れくさかった。

 鴇津はそっと液晶の電源を落とす。
 ブレザーの内ポケットに手をやり、タバコを手に取った。

 どこかで買った安いライターで火をつけると、煙はあっという間に立ち昇った。
 鴇津はその煙を眺めながら、4時間目が終わるのを待った。


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