
血とキズナ
第8章 レース
リツが陸上部に所属していたという。
鴇津は部活なんてものに縁はなく、入ろうと思ったこともなかった。
リツはやはり不思議な人間だ。
根っこは自分と似ているのに、歩んできた人生はまるで違う。
話せば話すほど、リツの不思議さが深くなっていく。
不思議で惹きつけられるリツだが、最近は新たな感情が出てくるようになった。
不気味。
一緒に時をすごし、言葉を交わして、時に笑いあっても、リツには底が見えなかった。
いつもへらへらして、アホみたいに明るい。
だが根っこは鴇津と同じ、真っ黒な闇。
兄に会ったときや明日斗が絡んだ時に時折見せる"あれ”が、きっとリツの奥に沈む正体のはずだが、リツはそれをめったに外に出さない。
鴇津は、それを見たかった。
しかしその真逆で、見たくないという思いもあった。
リツの本性を知りたい。
だがもしそれが表に現れたら、リツはリツでなくなってしまうのではないかという不安が鴇津の胸の中で渦巻いた。
リツはこのままで大丈夫なのだろうか。
自分に何かしてやれることはないのだろうか。
そんならしくない感情が、どんどんと湧いて溢れかえる。
鴇津はため息をつきながら、フェンスに寄りかかった。
その瞬間、スラックスの中でデヴァイスが震えた。メールだ。
鴇津にメールを送ってくる人物などたかが知れている。
見れば先ほど別れた東条からであった。
件名には『久々開催!』とある。
本文にはただ端的に『本丸峠深夜2時』とだけ書いてあった。
鴇津は部活なんてものに縁はなく、入ろうと思ったこともなかった。
リツはやはり不思議な人間だ。
根っこは自分と似ているのに、歩んできた人生はまるで違う。
話せば話すほど、リツの不思議さが深くなっていく。
不思議で惹きつけられるリツだが、最近は新たな感情が出てくるようになった。
不気味。
一緒に時をすごし、言葉を交わして、時に笑いあっても、リツには底が見えなかった。
いつもへらへらして、アホみたいに明るい。
だが根っこは鴇津と同じ、真っ黒な闇。
兄に会ったときや明日斗が絡んだ時に時折見せる"あれ”が、きっとリツの奥に沈む正体のはずだが、リツはそれをめったに外に出さない。
鴇津は、それを見たかった。
しかしその真逆で、見たくないという思いもあった。
リツの本性を知りたい。
だがもしそれが表に現れたら、リツはリツでなくなってしまうのではないかという不安が鴇津の胸の中で渦巻いた。
リツはこのままで大丈夫なのだろうか。
自分に何かしてやれることはないのだろうか。
そんならしくない感情が、どんどんと湧いて溢れかえる。
鴇津はため息をつきながら、フェンスに寄りかかった。
その瞬間、スラックスの中でデヴァイスが震えた。メールだ。
鴇津にメールを送ってくる人物などたかが知れている。
見れば先ほど別れた東条からであった。
件名には『久々開催!』とある。
本文にはただ端的に『本丸峠深夜2時』とだけ書いてあった。
