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血とキズナ

第8章 レース

「でもそれ警察とかバレたらやばいんじゃないの?」

「だから不定期なんだよ。場所もバラバラで知らせもその日かぎり。知り合いが知り合いを呼ぶ方式だからツテがなきゃ知らせを知ることもできねーってこった」

「へえー。おもしろそう」

 リツがそうつぶやくと、鴇津はパンの最後の一口を口に放り込む。

「なんだったら、お前も来るか」

 鴇津の提案に、リツはもちろん、ユウゴも一緒に驚きの表情を浮かべた。

「え、いいの?」

「トキツさんっ、こんなやつ来ても邪魔なだけっスよ!」

 しかしリツは頭をひねって考える。

「でも俺バイク持ってないし。本丸峠ってちょっと遠いしな」

「構いやしねぇよ。見学だけの人間だってごまんといるし、足がねぇんなら俺が乗っけてってやる」

 鴇津の申し出に、リツはぱっと笑顔を咲かす。

「マジで? 行く行く! すげぇ楽しそう」

 鴇津は次のおにぎりを取るのに乗じて、視線を落とした。

 リツの笑顔を、鴇津は直視できない。
 自分に笑いかける人間なんて、今までいなかったからだ。

「じゃあ1時すぎぐらいに、寮の入り口で待ってろ」

「わかった。ありがとう」

「おう」

 笑顔の受け止め方すら、鴇津は知らなかった。




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