血とキズナ
第2章 腕
騒動の過ぎ去った店内では、またバカ騒ぎが始まる。
しかし赤いソファの一角だけは、静寂が保たれていた。
「綾野リツ、どうするの?
カギ持ってたら」
小柄な少年が、隣に座る東条に話しかける。
「別にどうもしないさ。
カギを返してもらって、それで終いだ」
「だよね。でもおしいな、明日斗って人、僕も一回見てみたかった。
清春が自ら引き抜きなんて、凌一以来だよね。
ねえ、凌一」
少年がソファの端に座っている青年を流しみる。
しかし凌一と呼ばれた青年は少年に反応はせず、耳に嵌めたイヤホンに集中していた。
「は、クールだねえ。
まあ、凌一も柴鳳の一員かと言われれば微妙だよね。
自分勝手で、ここにもあんま来ないしさ」
青年は目をつぶり、背もたれに背中を預けている。
その横顔を、東条はじっと眺めていた。