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血とキズナ

第8章 レース

「まあ、用は俺たちと勝負しようぜってことだ。今まで無敗らしいが、俺らも負けたことがない。どっちが速いか、勝負しようぜ」

「ちょっと待て。俺らってどういうことだ」

 身動きの取れないユウゴがいちばんに口を出す。

「てめぇはさっきからうるせぇな。ザコは引っ込んでろよ」

「ザコに言われたくねーってんだよ! ザコいからサシで勝負もできねんだろ! ゲスいんだよクズ! 走んならサシで走れってんだ!」

「テメェ、マジでイわすぞコラ……」

 青筋が走り出すロンゲの男に焦り、リツがユウゴの口を塞ぐ。

「すいません。こいつ鴇津さんのこと大好きなんでつい。すいません」

 リツがなぜか頭を下げる。
 リツの血の気のなさに、ロンゲの男も舌打ちとともに足を引っ込めた。

「勘違いしてほしくはないんだが、3対1の勝負をしようってんじゃない。俺たちだってプライドはあるからな。3対1で勝ったってなんの自慢にもならないだろ。
 用は1対1対1対1だ。掛金は買った奴が総取り。勝てば1レースで3回分の賞金を手に入れられるんだ。悪くないだろ?」

「騙されちゃダメっすよ! こんなこと言って、絶対3人で組むに決まってんだ!」

 リツの手を振りほどきユウゴが口をはさむ。

「じゃあどうする、逃げるのか? ここの最速男は負けるのが怖くて逃げる腰抜けか」

「だから勝負すんならひとりで来いつってんだよ!」

「ユウゴ、うるせえ。黙れ」

 今まで口を開かなかった鴇津が、静かに口を開いた。

「す、すいません……」

 いくら言っても吠えまくっていたアホ犬が、一瞬で静かになる。

「掛金は」

「あ?」

「掛金。いくら」

 金髪がにやりと口角を上げ、広げた手のひらを鴇津に向けてきた。

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