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血とキズナ

第8章 レース


「5万」

「5まッ!!」

 驚いたのはリツとユウゴだ。
 5万なんて、高校生がアルバイトで月に稼げる額とあまり変わらない。
 それが4人なので、勝者は15万の賞金を手にする。
 リツとユウゴは予想外の額だったのか愕然としていた。

 この駆けレースの平均掛金は、大体1万円前後。
 この集会はバックに暴力団がいるとか、観客が賭けをするということはない。
 純粋にバイクやレースが好きな連中の、ちょっとしたパーティのようなものだ。
 だからそこまで大きな金は動かないし、金のいざこざもない。

 だから5万というのは、だいぶ大きなレースだが、鴇津は盛大にため息をついた。

「あんたら、いくつだ」

「あ? 24だ。それがどうした」

「だったらもっと稼いでるだろ。んなセコいこと言ってんなよ」

「ん、だと……」

 鴇津の反応が予想外だったようで、3人の男がたじろいだ。
 リツもユウゴもぽかんとしている。

「じ、じゃあ、いくらならいいってんだ」

 5万という強気の額がたかが高校生に鼻であしらわれ、3人組は焦っていた。
 鴇津は背負ってきた小さなカバンから財布を出し、男たちに放り投げた。

「全額賭ける」

 受け取った財布を見て、男たちはいそいそとその中身を見る。
 3人の動きが止まった。

「20まん……」

 吹き出したのはユウゴだった。

「20万て……え?」

「なに、持ってねぇの」

「えっ、いや、でも……」

 口ばかりのチンピラに、鴇津は苛立った。
 そこに、知った声が乱入してきた。

「ようようニイチャン。コーコーセーが賭けるつってんのに、シャカイジンが尻込みすんのはちょっとカッコ悪いんじゃないの?」

 坊主に剃りこみ。
 夜なのにサングラスをしている松根が、右側に立つマスクの男と肩を組んだ。
 左側のロンゲの隣には、土井が仁王立ちしている。

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