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血とキズナ

第8章 レース

「つか、チーム名名乗って鴇津に勝負挑んだ時点で、お前に逃げ道はないんだよ。
 ブルースターズだかブルースリーだか知らないけど、この人らは20万賭けるのが怖くて逃げ出すチキンチームなんですてーみなさーん」

 松根は鴇津たちの動向を窺っている観客たちによくわかるよう声を張り上げる。

 周りが注目していることに気づいた金髪は、唇を噛みしめ震えだす。

「賭ける。賭けるに決まってんだろ!」

 鴇津の財布を、思い切り投げ返してきた。

「いいな、逃げんじゃねえぞ!」

 そう言い残し、3人組は人混みの中に姿を消した。

「こっちのセリフだっての」

 人混みに向かって、松根がボソリとそう言った。

「松根さんも来てたんだ」

「おう。俺たちは常連よ」

 松根と土井の隣にも、鴇津と同じ車種の車体が二台並んでいる。
 鴇津は黒だが、松根は紫、土井は赤だ。
 そのキーたちにも、紫鳳幹部の証、白い羽のキーホルダーが揺れていた。

「松根さんたちにも通り名みたいなのあるの?」

「あるぜ。俺は逃げ切りの松根。こいつは捲りの土井」

「あんまかっこよくないね」

「うるせー。気にしてんだよ」

 リツがケラケラと笑う。

「じゃあ俺行くわ。第1レースなんだよ」

 松根はバイクにまたがり、ハンドルにかかるヘルメットを手にした。

「鴇津」

 鴇津がめんどくさそうに、顔を向ける。

「負けてもいいぞ。俺があとで敵とってやるから」

「誰に言ってんだ」

 鴇津の反応に満足したのか、松根は微笑んだ。
 サングラスを外し、リツの頭に乗っける。

「終わるまで持っててくれ」

「邪魔なら持ってこなきゃいいのに」

「ファッションなんだから仕方ねえだろ」

 じゃあな、と松根は公道へ走っていった。
 手を振って見送るリツの横に鴇津もやってきた。

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