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血とキズナ

第8章 レース

 しかし昼の世界も、最近は悪くない。
 昼の世界と夜の世界が混ざり合って、不思議な色を見せてくれるようになった。
 居心地の悪い気分にさせられることもあるが、嫌悪感はない。

「鴇津ー」

 人混みから松根がやってきた。

「次だぜ。早く来いよ」

「ああ」

 短くなった煙草を踏み潰し、跨がっているバイクのエンジンを回した。

「先行しろよ」

 松根が言った。

「3対1じゃねえとか言ってたけど、どう考えたってありゃ3人でお前潰しに来るぞ」

 第1レースで走った松根は勝った。
 スタート地点にいた鴇津とリツは、松根のスタートしか見なかったが、携帯で勝敗の報告をする観客がいるので、ゴール地点にいなくてもレースの概要は知ることができる。

「いくらお前でも、前に3人並ばれたら抜く隙なんてないぞ」

 鴇津はバイクをゆっくりと走らせた。
 それを無視と捉えた松根は、顔をひきつらせる。

「おいっ、たまには人のアドバイスも聞けよな」

 松根の声が遠ざかる。
 鴇津は自分のレースのためにあけられたコースへ乗り込んでいく。

 松根の言っていることは正しい。
 先行してぶっちぎってしまえば、3人が束になろうがどうしようが、関係ない。
 鴇津のバイクはかなりの馬力があるし、スタートダッシュで先行するのはそう難しいことじゃない。
 あとは全開で峠を下っていけばいいのだ。誰も追い付けやしない。

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