血とキズナ
第8章 レース
「では次のレースを始めます」
スタート地点では、今回の主催者がレースの段取りを行っている。
「今回のレースは、4人が同時に走ります! しかも掛け金はなんと20万!」
主催者が観客を煽る。
待ってましたとばかりに、歓声がさらに勢いづいた。
そんな盛り上がりをよそに、鴇津は観客に囲まれたスタートラインに向かう。
「そして、この一大レースを提供してくれたのが彼ら、ブルースターズの方々です!」
すでにスタート地点で待機している例の3人に、歓声が上がった。
きもち彼らの表情が強ばっているように見える。
「そして、彼らと走るはこのレースで無敗を誇る通称黒槍、鴇津凌一さんです!」
ブルースターズにはなかった黄色い声援が沸き上がる。
もちろん女性の声援だけではない。
鴇津のファンは、けっこう多いのだ。
声援をバックに受けて、鴇津はスタートラインについた。
「よく逃げなかったな。褒めてやるぜ」
ひきつる顔をそのままに、真ん中に立つ金髪が言った。
鴇津は並ぶ3人のいちばん手前に陣取った。
「怖かったら逃げてもいいぜ。なんなら5万にまけてやろうか」
正直、掛け金はどうでもいいのだ。
鴇津にとって掛け金は、相手に本気を出させる口実に過ぎない。
ただ、自分が思い切り走れればそれでいいのだ。
鴇津の言葉の真の意味など知らず、男たちは鼻で笑った。
「なんだ、ビビってんのか? あんだけ大口叩いといて、今さら逃げれると思うなよ」
男たちに余裕が生まれる。
鴇津はヘルメットを被り、 地面につく足に力を込めた。
「ならいい。さっさとしろ 」