血とキズナ
第2章 腕
「なあなあ、リツはどんなのがタイプ? やっぱ巨乳?」
佐山が覆い被さってくる。
「お前ちっけぇよ」
「リツのタイプとかすっげえ気になる。
どんなんがいいの? シュチュエーションとかさ」
ぐいぐいと顔を近づけてくるので、リツは肘でガードする。
「あーうるせえ。さっさと服かたせよ」
「なんだよノリわりいなぁ」
ぶーたれながらベッドを下りた佐山は、再び服を片付けだした。
リツは天井を眺める。
白い壁紙は所々剥がれているが、霧金の校舎ほどは荒れてはいなくてよかった。
「リツはさ、ゲームとかやんの?」
「あんまやんねえな。昔はやったけど」
「マンガとかは?」
「ここずっと買ってねえな」
「雑誌とか」
「買ったことねえな」
「マジかよ。
じゃあお前、小遣いとか何に使ってんだ?
服もあんま持ってねえみたいだしさ」
「ガキん頃は駄菓子とかかな」
「ガキん頃じゃなくてっ、今だよ、今現在!」
佐山の手がまた止まる。
「今は小遣いなんかもらってねえよ」
「え、マジ?」
「ああ、小遣いなんかもらえる立場でもなかったし」
「立場?」
佐山の声色が少し変わる。
「そうそう。
小3の頃に親が死んでから叔母さん家で世話になってたから、小遣いとかさ、図々しいだろ」