テキストサイズ

血とキズナ

第2章 腕

 小さいとき、誰でも一度は聴いたことのある曲。

 リツの心は少し和んだが、一方の佐山はビクリと体を震わせ、ポケットからケータイを取り出した。


「ははは、なんでメリーさんの羊なんだよ」


 リツがベッドの上で笑ってやれば、佐山は頬を引きつらせた。


「着メロぐらいポップにしなきゃやってらんねえんだよ」 

「?」


 佐山はピカピカ光るケータイを開き、ゆっくりと通話ボタンを押した。


「も、もしも――」
《こんのクソガキがあ!!》


 リツの耳にまで届く女性の怒号。
 佐山は思わずケータイを離した。


《入学式サボるたぁどういう了見だぁ、あ?》

「いやっ、それにはわけがあって」

《言い訳無用。
 出来が悪いとは言え、息子の門出を祝ってやろうと思ったっつうのに。
 こちとら有給使ってんだよ、テメエのせいで1日ムダにしたわ!
 罰として3ヵ月、小遣い抜き!》

「さっ、3ヵ月って……それはちょッ――って……切れてるし」


 ベッドの上にいるリツにも、ほぼすべての会話が聞き取れた。

 リツは恐る恐る聞いてみる。


「……お母ちゃん?」

「……うん」

「こえぇ……」

「元ヤンだからな、ちょっとでも逆らったら殺される……。
 しかも仕事はトラック運転手」

「うわ、カッコえ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ