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血とキズナ

第2章 腕

 



   ◆ ◆



 寮近くの、商店街の外れ。
 地下へ続くコンクリート性の階段の入口に、『時雨』という壊れた電飾看板が立っていた。


「ここだ」


 そう言って、煙草の男が階段を下っていく。

 それにリツは続き、その後ろを大男がついてきた。

 細い階段を下りると、突き当たりには赤い扉があった。

 あそこに、東条清春という男がいる。
 明日斗に貸しを作った男。

 力を誇示することに興味のない明日斗だったが、腕っぷしの強さは本物だった。

 一緒にケンカをしたりはあまりなかったが、明日斗の武勇伝は1つや2つじゃない。


 とはいえ、リツもそんなことに興味はなかった。
 ケンカに勝とうが負けようが、リツには関係なかった。

 ただお互い笑いながら、ずっと一緒にいられれば、それで良かった。


 煙草の男が扉を開ける。

 からんからんと、ベルが鳴った。


「東条さん、連れてきました」


 店中は、物々しい空気をまとった男たちの騒ぎ声で充満していたが、リツたちの到着で簡単に静まった。

 リツは煙草の男に背中を押され、店の中心に立たされる。

 そして周りの男たちが立ち上がり、扉付近を固めるようにリツを囲んだ。

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