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血とキズナ

第2章 腕

 ――俺は、ケンカはそれほど好きじゃない。

 人を殴るなんて、体力使うし手は痛いし、いいことなんてない。
 だから今までは、こういう状態に出くわせば、基本的に逃げに徹していた。
 そのほうが早いし、楽だ。

 だが、今回は逃げてどうなるもんでもない。

 ここで逃げたところで、俺はこのカギを返せない。

 返せなきゃ、ここまで来た意味がない。


 逃げるわけにも、カギを取られるわけにもいかない。

 だとすれば、やることは1つ――。


 リツは、飛んできた大きい拳をかわした。

 そして相手が驚いた隙に懐に入り込む。

 手の中でカギを持ち直し、リツはその拳を思い切り男の腹に叩き込んだ。

 握っていたカギが、深く男の鳩尾をえぐる。


「…ご……はぁッ」


 リツより頭一つ分以上は大きい男が、胃の中の物を吐きながら床に沈んだ。

「…………」

 他の男たちは、その一瞬に息を呑んだ。


「カギ、渡す気はないんで、そっちがそう来るなら、俺も抵抗させてもらいます」


 ぐっと、右手のカギを握り込んだ。


「クソガキ……。調子にノんじゃねえ!!」


 十数人いる男たちが一斉に飛びかかってきた。

 リツは冷静に1人ずつ、鳩尾にカギをめり込ませていく。

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