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血とキズナ

第1章 約束のカギ

 お前は全校生徒の名前を知ってんのかよとも思ったが、リツは「ふーん」とだけ返した。

 しかし彼の詮索は止まらない。


「なんでこの学校に来たんだ?
 こんな学校ふつうの奴はこないだろ。
 柏木中だったらまあ近所だし、この学校のこと知らなかったわけないだろ? 柏木もけっこうイケイケの奴いるしな」


 よくしゃべる奴だな――。

 リツは少し呆気にとられた。
 しかし、こいつのいうこともわかる。
 どんなにバカだって、まともなやつはこんなところ絶対こない。

 黒髪で、制服もしっかり着こなしているリツみたいなタイプは、霧金高ではレアだ。


「別に、ちょっとやることがあるんだよ」

「こんな学校でやることって何によ。
 あ、もしかして高校デビュー? 不良の世界でトップに立つとか?」

「興味ないよそんなの」

「じゃあなによ」

「話せば長くなるから、そのうちな」


 静まった佐山は、前のめりになっていた腰を戻した。


「で、お前も、言うとこの不良か?」


 リツが落ち着いたトーンで話す。


「そ、でもケンカはすこぶる弱くてね。
 だから情報集めまくって身を守ってんの。これでもダチは多いからさ」

「だったら、お前こそなんでここに入ったんだよ、年中ケンカ祭りなんだろここは」


 まるで見計らったかのように、廊下から鈍い衝撃音が聞こえた。

 そして野太い声が「いけー」だの「やれー」だのとはやし立てている。

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