テキストサイズ

血とキズナ

第3章 ノウテンキな男

「それに俺、逃げ足だけは自信あるからさ。
 逃げ道なら、俺に任せなさい」


 どんと鼻高々に胸をたたく佐山は、確かに逃げ足は早い。

 というより、追っ手を巻くのが異常に上手い。


「10分しか走れないのに、不思議なこともあるもんだよな」

「うるっせ! スポーツと実戦は違うんだよっ」

「あんまり叫んでるとバテるぞ」

「ふぐっ」


 結局、追っ手は5分もしないうちに巻いた。

 そのあとはしれっと授業に戻り、しっかり体育の授業を受けるのだった。




   ◆ ◆




「いっそ土建とかは? それなら柄悪くても雇ってくれんじゃない?」

「そんなとこ、学生なんか雇わないよ。フリーターなら、いくつかあったけどな」

「え、そうなの?」

「そうだよ」


 リツは、購買で買ったコッペパンをかじりながら、求人情報誌をめくっていた。

 昼休みは、カギを狙われる確率がいちばん高い時間帯だ。

 授業中は、体育のような例外もあるが、教室で受けるような授業であれば、教師が近くにいることもあって、あまり危険はない。

 しかし昼休みは教師の目が離れるため、四方八方からカギを奪わんとする連中が集まってくる。

 休むどころかご飯を食べる隙もなかった。

 しかし今は、こうして情報誌を眺めるぐらいの余裕を持てる場所を見つけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ